自分は、それを読んだ時に無茶苦茶に感動して、それまでただ単行本を買って楽しんでんでいただけの金田一少年の事件簿だったのが、自分も "推理ミス探し" にハマり込んで行くキッカケとなった、多大なる影響を受けた思い入れのある物語が、この『学園七不思議殺人事件』なのです。
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1:魔の十三階段
2:手首の這い回る印刷室
3:あかずの生物室
4:知恵の女神
5:血に染まる井戸
6:首吊り大イチョウ
・・という6つのいわれがあって、これに続く7つ目の不思議
7:楽器室のガラス戸に映る血まみれの生徒
この7つを全部知ってしまうと放課後の魔術師に殺されてしまう、、というのが物語の骨子となっている。
で、物語そのものは、いくつもの副ストーリーが絡み合ったかなり複雑なものとなっているのだけど、上の『鏡に映った衣装の反転部分』が修正されている点を含めて、全体的には『何となく筋が通ってまとまっている』ように見える。
"ように見える" のだけど、、でもよ~くよく考えてみるとイマイチすっきりと収まらない点もあったりする。
30年前の高畑製薬に関する、神保博士と被験者行方不明のあたりに関するくだりについてである。
この物語は、結局のトコロこの『30年前に高畑製薬が行なった新薬実験』が元となって現在の殺人事件に繋がっている、という流れになっていて、
●A:今回、不動高校の七不思議を調べていた桜木るい子 と、
●B:10年前、不動高校の六不思議を調べていた青山ちひろ
この両者とも、犯人マトバが隠そうとする秘密の核心
『高畑製薬の人体実験により6人の被験者が死亡し、その事実を隠すため6人の遺体が旧校舎の6カ所に埋め込まれて隠されている』
という秘密に迫ったために殺された(青山ちひろについては事故?)・・というコトになるワケだけど、要はその流れ自体に問題があるのである。
どういうコトかと言うと、桜木るい子に関しては、
地震によってミス研部室の壁が崩れて白骨が露呈しているのを目撃したから殺された
という流れになっているのだけど、でも10年前に死亡した青山ちひろは、高畑製薬が隠そうとしている秘密に気付いたために殺された、というコトになっている。
これの何が問題なのかと言うと、30年前の神保博士に関しては、
●『大戦で負傷した兵士の傷の無い部位だけを集めて無傷の兵士を作ろうとしていた』というのはただの情報操作のウソで、実際は『兵器開発の研究をするくらいなら逮捕される方がマシ』と考えるようなまともな人間であった
というコトと、あと30年前に失踪した6人の被験者については
●『警察も捜索したが何も分からなかったそうだ』
というコトで、つまりそれは失踪するに至る原因=高畑製薬が新薬の開発で人体実験的なコトを行っていた辺りについても警察捜査でも辿り着くことが出来ていなかったというコトのハズで、
ようするに、
今回の、地震で壁が崩れて気付いた桜木るい子はともかく、10年前の青山ちひろは、高畑製薬の行いや学校内に遺体が隠されているということについて確かな証拠なんて何も掴めていないハズなのに、何を根拠に自信満々に謎を解いたつもりでいたのだろう??
30年前に警察が捜索しても分からなかった、失踪した6人が実は遺体となって不動高校に埋め込まれている、という秘密に、ただの女子高生が、ナゼ?どこから?どんな過程で? 迫る事ができたのか?? その部分の説明が根本的に欠けているのである。
10年前の青山ちひろについて、マトバは『すぐに飽きて諦めるだろう』と思って静観していたわけで、その状態から、今回の桜木るい子のように学校のどこかから遺体が発見されたわけでもないのに、何を? どう調べて? 学校に6人の遺体が埋め込まれていることと、マトバがその関係者であるという事実に行きついたのか?? どこにもなんの証拠も描写されていないのにナゼそんなに自信満々でこの事実を警察に通報するとか言えるのか??
その辺りが明確に描写されていない状態では、結局、青山ちひろとは
ただ激しい思い込みだけで秘密を暴いた気になってマトバを犯罪者扱いし、30年前に捜索しても何も分からなかった警察に今また何の証拠もないまま通報しようとして階段から転がり落ちて死亡した、どちらかというと困ったちゃん系の夢見がちな推理オタク女子高生であった
・・と、言われても仕方がないのでわないだろーか?
あとついでに、重箱の隅をつつくようなアラを1つ。
今回初登場となる真壁の、
『僕も電話で呼び出され生物室に行ったんです』
という部分に関して、その後の警察の捜査で、
剣持:『本人は他の連中同様電話で呼び出され学校に来たみたいに言っとったが 事件当夜奴は10時半すぎまで一度も家に帰らなかったらしい つまり電話で呼び出されたなんて真っ赤なウソってことだ』
・・という部分。
コレに関して『じゃ結局、真壁は何が原因orどんな理由で夜の学校にやって来たんだ??』・・という要素が物語内で回収されていない。
・・・とまあこんな感じで、、、この『学園七不思議殺人事件』、金成氏の初期作品でかなり力の入った、基本的にいくつもの副題を複雑に絡み合わせた素晴らしい物語だと思うのだけど、この、全体的に『何となく筋が通っている感じがする』ように見えるのだけど実際はイマイチ消化しきれていない部分が残っている、という辺り。。この辺が少々残念な点のように思える。