『魔犬の森の殺人』 の問題点 /金田一少年の事件簿

☆過去の推理検証
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★物語★
みゆきたちのキノコ狩りに強引についてきたはじめは、やがて古びた研究所跡に迷い込むことになる。
そこで6人の大学生たちと知り合い、みんなで泊まるコトになったのだが、そこで『魔犬ケルベロス』による残忍な連続殺人に巻き込まれる。
やがて事件の焦点は『魔犬なんて本当にいるのか?』という問題に行き着き、はじめは見事に真犯人の巧みな心理誘導を暴いて事件は解決となった ――― のだが・・・






1:『犯人による誘導』の問題点

この事件では、物語の発端から殺人トリックに至るまで、"犯人による誘導(心理的なものを含む)" が極めて大きなウエイトを占めている。中でも、特に重要となるのが以下の3点である。

A:金田一たちのグループを、事件の舞台となる研究所跡に誘導する。
B:『萬屋さんなら、さっき洗面所でヒゲ剃ってたけど・・・』という一言で、はじめたちの思いこみを誤った方向に誘導する。
C:『窓とか塞がないと・・・・』という一言で、全員の行動パターンを誘導する。

これら3つの "誘導" は、後にはじめが犯人を追いつめるときの論理展開にも用いたものであり、実際、もしこれらの内のどれか1つでも失敗しているとこの殺人計画そのものが成り立たなかったハズなのだから、これら犯人による心理操作は、正に芸術的としかいいようがないホドの見事な出来映えだったと言えよう。

ただ、芸術的な出来映えは結構なのだが、よくよく見てみると、実は上記 "A" に関しては、犯人ではなくて、あろうことか全てはじめ自身が誘導しているのである。
そもそも、本来の宿泊先となるハズであった八尾の別荘を燃やしたコトからして、その原因はどう考えてもはじめであるし、森の中を彷徨っている時に『向こうで何か光ったような・・・・』、『人が住んでる家があるかも知れない!行ってみよう!』と言って研究所跡に向かうように仕向けたのもはじめなのである。(少なくとも "向こうで何か光ったような・・・・" と言ったのは間違いなくはじめであるハズである)
さらに、後にはじめは

『暗闇でライトを持って先頭を歩けば、自然と主導権を握ることができる・・・』

などと説明しているが、犯人は先頭どころかどん尻を歩いているではないか!(少なくとも第一刷発行分では)

もっとも、仮にはじめが何もしなかったとしても、恐らくは何らかの手段を用いて研究所に向かうように仕向けたハズなのだろうが、ともあれ、この事件の流れに関して言えば、はじめたち一行が研究所跡に泊まるコトになったのは全くの偶然であったとしか考えられないのである。


2:『ケルベロスの檻』の問題点

この事件では、地獄の番犬『ケルベロス』の存在 "感" とでもいったものが、非常に重要な役割を担ってくるコトになる。何しろ犯人役を演じることになるのだから。
犯人としては、何としてもケルベロスという魔犬の存在 "感" を全員に植え付けておく必要があり、また実際にそのようになったのだ。
ただし、そのようになったのは結構なコトなのだが、トコロがその "ケルベロスの檻を発見するに至る過程" に関しても、実はコレも犯人は誘導どころか全く関与していないのである。

『なあ! 腹一杯になったところで、ちょっとこの中探検してみないか?』

と言いだしたのは萬屋であるし、本棚に隠された扉を発見したのははじめなのだ。

そもそも、仮にはじめの言うように、『(この計画に向けて)犯人は巨大なケルベロスの檻を用意し・・・』ていたのだとすれば、わざわざ隠し扉を元通りに戻しておく必要などないのだ。それどころが、あたかも内側から叩き壊されたかのごとく偽装しておく方がよっぽどそれらしくなると言うものである。
(なお、コレは余談になるのだが、どうやってあの部屋の中にあの檻を入れたのだろう?どー考えてもあの隠し扉を通るようなデカさではないような気がするのだが・・・)

ともあれ、この事件の流れに関して言えば、はじめたち一行が『ケルベロスの檻』を発見したの "も"、全くの偶然であったとしか考えられないのである。


3:不動高校メンバーの問題点

トコロで、コレは非常に重要なコトなのだが、

『そもそも犯人にとって、あの場所に不動高校のメンバーがいる必要はあったのだろうか?』

例えば

『実は不動高校のメンバーの中にも復讐の対象となる人間がいたのだ』

――― というならハナシも分かるのだが、今回の場合『あの場所に不動高校のメンバーがいた』という事実は、犯人にとってはマイナス要素以外の何物でもないのである。事実、はじめとみゆきと八尾があの場所にいたから『トマトがメロンに潰される』といったダイイングメッセージを残されてしまったようなモノだ。

そもそも、よくよく考えてみると、あの4人の学生を殺すコトだけが目的であった場合、

 ◆犯人自身が研究所跡の内側に入り込んだ状態で、
 ◆訓練された犬と、
 ◆『狂犬病』という伏線と、
 ◆犬を操るための犬笛がある。

という条件さえそろえば、あとは不動高校のメンバーなどいなくても同様の筋書きを実行できるのだ。
ちなみに、

『不動高校の仲間と一緒じゃなくて犯人が一人だけだったとしても、大学生グループの仲間に入ることが出来たかどうか?』

といった問題に行き着く人もいるかも知れないが、コレも別に仲間に入る必要などないのである。
そもそも、今回犯人が仲間に入って行ったコトと言えば『狂犬病を意識させる』くらいのモノで、それくらいなら訓練させた犬に簡単に "演技" をさせるコトが出来るはずであり、医学系の学部に所属している者が見ればたやすく "狂犬病" に行き着くハズだからだ。あとは、犯人としては "ジェイソン" のごとくその辺に息を殺して潜みつつ、スキを見つけて、狂犬病に怯える大学生たちを殺してゆけば良かったのである。

つまり、

 ●そもそも、研究所跡にはじめたち一行を誘導したのでは犯人ではなかったという事実。
 ●さらに、『ケルベロスの檻発見』に誘導したのも犯人ではなかったという事実。
 ●そして恐らく、あの場所には不動高校のメンバーがいなかった方が、計画がスムーズに実行できたであろう事実。

これらのコトを鑑みた時、行き着く結論は一つしかない。
つまり、

『もともと犯人は、単独で研究所跡に乗り込んで殺害計画を実行するつもりだったのだ』


4:問題点

ど~~~考えてみても、そうとしか思えない。

恐らく犯人は、キノコ狩りと称して八尾の別荘に到着したのち、適当なタイミングを見計らって『急用が出来たから・・・』などとして "帰る" 予定だったに違いない。
で、仲間とは別行動となってから、一人で研究所跡に向かうつもりだったのだ。

トコロが、そんな犯人の計画を、はじめが潰してしまったのである。
もともと来るハズだった "冴子" をトイレに閉じこめてまで強引にキノコ狩りに参加し、八尾の別荘を燃やし、森を彷徨った末に研究所跡を見つけてゾロゾロと流れ込んでしまったのだ。
つまり、不動高校一行はたまたま研究所跡に泊まることになっただけのコトであり、その原因は、元はといえば全てはじめにあるのである。
そして、たまたまメンバーが『ケルベロスの檻』を発見したモノだから、それを利用する計画にとっさに変更しただけのコトなのだ。
少なくとも、『はじめがパンツ姿でみゆきを追いかけてきて急遽参加することになったコト』・『その結果としてはじめが八尾の別荘を燃やして研究所跡に泊まるハメになったコト』・『メンバーがケルベロスの檻を発見したコト』といった、これら今回の事件を構成するファクターを

 『犯人は始めからそれら全てを計算に入れていたのだ!』とか
 『たまたま、全て犯人の計画通りにコトが進んだのだ!』

ナドと考えるよりは、遥かにスジが通っているハズである。

金: 『自首してくれ・・・・ 犯人は・・・・・・ お前しかいないんだよ・・・・』
犯: 『・・・お前が来ることになると分かった時、何となくこうなるような気がしてたんだ・・・』
金: 『・・・なんてこった・・・ こんなコトになるなら、来るんじゃなかったぜ・・・』
犯: 『・・・いや、コレで良かったのさ・・・ お前は何も悪くなんかねーよ・・・・・・』

と、もしかしたら、最初はマジにこの事件はこういうシチュエーションになるハズだったのかも知れない。
トコロが、こういうシチュエーションを演出するには 『魔犬』 というのはちょっとオドロオドロしすぎていて、全体的な作品イメージとしてふさわしくない。
だから急遽変更して、このシチュエーションは 『雪影村・・・』 で使うコトになったのだ・・・・

――― と、そう考えれば、研究所跡に至るまでの過程と最後のはじめの推理が食い違っているコトも説明できるのだが・・・・ 真実や如何に ―――


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by mystery_DsD | 2012-04-23 10:56 | @過去検