『雪夜叉伝説殺人事件』 の真実 /金田一少年の事件簿

☆過去の推理検証
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◆ 物語 ◆
人間嫌いで有名な画家『氷室』の別荘で、ドッキリ番組のロケが行われることになり、みゆきの代わりのアルバイトスタッフとしてはじめも同行する。
やがて、はじめの目の前のモニタ上で『雪夜叉』による殺人が起こり、この回が初登場となる明智健吾とともに犯人のトリックに挑むことになる。
やがて、殺人トリックの焦点は『谷を大きく迂回するルートを如何に時間短縮して別館までたどり着いたか』という問題に行き着き、はじめは寒冷の北国ならではのトリックを見事に暴き出し、事件は解決となった ――― のだが・・・






1: "自画像" と "5台のカメラ" の真実

この事件では、『氷室画伯の自画像』 と 『ドッキリ用の5台の隠しカメラ』 が、それぞれ別館のどの位置に配置されていたかということが重要な鍵となる。

まず、5台の隠しカメラの位置を物語の中の描写から推定して行くと、

・1:雪夜叉が壊したと思われるカメラ。
・2:加納が部屋から出てきて『も・・もうやめて~~!!』とベソをかいているトコロを映しているカメラ。
・3:加納の部屋内に取り付けられたカメラ。
・4:雪夜叉が去って行く場面・綾辻がクルマでやってくる場面を映しているカメラ。

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と、この4台のカメラに関しては、まず間違いなく図の通りの位置に配置されていたと考えられる。
で、問題は "5台目のカメラ" がどこに取り付けられていたかというコトなのだが、実はこれは氷室画伯の自画像の位置と併せて、かなり重要な意味合いを持ってくるのだ。

そもそも、はじめが "毒入りコーヒーを飲んで死んだ" あのスタートの場面を思い出して頂きたい。
ディレクターの比留田が 「カーット! はい、OK!」 と叫ぶシーンがある。
つまり、はじめが "死んだ" あの部屋にも、隠しカメラが設置されていたハズなのだ。後に隣の部屋からカメラ機材を担いだスタッフがゾロゾロと登場するが、そんな通常機材だけで屋内のドッキリが撮影できるワケがないのだ。
また、ドッキリカメラの性質から言っても、せっかくアルバイト(はじめ)まで雇って、"あの部屋" で速見や加納を驚かせたのだから、どこかにカメラを隠しているのは当然と言えよう。

ところで、はじめが綾辻と一緒に、最初に "氷室画伯の自画像" を見たシーン(※1)に続いて、「おっこっちの部屋にもいろいろあるぞ?」 と、チラッと右側の扉の隙間に目をやり、するっ・・と部屋に入り込む場面がある。
(※1) そもそも、その場所が廊下であることを示す描画はなく、また、先の "綾辻と下を 歩くシーン" からは "速見がベッドで考え込むシーン" によって区切られている。

問題は、そこに描かれている "扉" なのだが、

「その部屋から見て、左側に蝶番が付いて、外側に開く扉」

は、"はじめが死んだ部屋" と "撮影スタッフが隠れていた部屋" との間の扉 (説明図参照) しかないのだ。
つまり、説明図の、"間の扉" の開いたすぐ "下" の位置 (図×位置) に氷室画伯の自画像が飾られていたのであり、後に、その自画像を真正面から捉えた画像が出てくるため、第5の隠しカメラは、"はじめが死んだ部屋" の左側の扉のやや左の位置、にあったと考えられる。

先の※1辺りのシーンと、後に出てくるはじめの 『なんかこの廊下、昨日と様子が変わっているような・・・』 というセリフから、まんまと自画像が廊下に飾られていたかのような錯覚に陥れられたのだが、そもそも "死んだ" ことになっているはじめは昨日一日立入禁止側から出て来ていないハズで、つまりはじめの言う『昨日の廊下』とは立入禁止側の廊下なのだ。
加納の部屋側の廊下と比べると様子が違うのは当たり前なのである。

なお、"撮影スタッフが隠れていた部屋" というのが、実は氷室画伯の部屋であり、"間の扉" から入ったはじめは、"廊下に面した扉" の前で氷室画伯のサインをもらったことになる。

また、最初のドッキリのシーンで、はじめが 「ちはー コーヒーお持ちしましたぁ」 と入ってくるのも、その後明智が 「そのまま! 動かないで!!」 と登場するのも、この "間の扉" からである。
まあ、ドッキリの裏を知る者達としては "撮影スタッフが隠れていた部屋" から現れても不思議ではないが、これはちょっと雑な演出であったと言えよう。


2: "雪夜叉が壊したカメラ" の真実

では、雪夜叉が壊したのはどのカメラで、また、それはなぜか?
これは、"雪夜叉がカメラを壊す模様の画像(雪夜叉とカメラとの位置関係)" から見て、第1のカメラしかあり得ない。

では、なぜ壊す必要があったのか?
物語の中では、はじめはその理由を、

「"氷室画伯の自画像を持ち去る現場を見られないようにするため" と思わせることで、"はじめ達の思考をニセ氷室犯人説" に向かわせようとした」

と推理しているが、これは明らかにおかしい。
話は再び "はじめが最初に自画像を見かけた場面" へと戻るが、そもそも、

「―― でも、なんかこの絵変じゃない?」

と言い出したのははじめである。
それを横で聞いた犯人は、すかさず 「五千万はするっていわれる名画に~」 などと説明して、はじめに "自画像" を印象付けることに成功したのだ。
後は、いつでも、スキを見てこの絵を処分してしまい、自画像が紛失した、ということをはじめ(あるいは誰か)が気付くのを待つか、さもなくば自分が言い出せばよいのである。

「犯人にとっては、自画像の不自然さと、自画像の紛失という事実を誰かが知っていればそれで良いワケで、加納殺しの現場で、あたかもその場で思い立ったかのような "フリ" をして見せる必要など全くない」

のである。

では、雪夜叉がカメラを壊した、その本当の理由はなにか?
それは、

「雪夜叉が加納を殺して廊下を去って行くとき、自分が放った "氷橋を溶かす炎" がまだ燃え続けている、のを窓越しに見たため」

としか考えられない。
もちろん、この時点でカメラを壊したところで無意味なのだが、思わぬ事態に遭遇したため、一種のパニック状態になっていたと考えられる。
と言うのも、物語内では、その辺の犯人の心理は全く無視されているが、この時点では、犯人にとっては、"はじめや明智の嫌疑をニセ氷室犯人説に導く" ことよりも、自分のトリックを見破られる元となる "炎の存在理由" を詮索させないことの方が、遥かに重要なことだからだ。トリックを見破られてしまっては、ニセ氷室どころではないのだから。

犯人としては、何とか "炎が収録されているビデオテープ" を回収しようとチャンスを伺い、また、"炎の存在理由" に話題が及びはしないかと、内心ではヒヤヒヤしていたハズである。

そして、そんなタイミングで、"村のおじいさんからの事情聴取" があるのだ。

犯人は、その事情聴取の内容を、扉の外で聞き耳を立てて聞いていたに違いない。そして、おじいさんが帰り際になって、"鬼火" の話を持ち出したのには驚いたことであろう。
犯人は、大急ぎで玄関の雪だるまから明石の死体を露出させ、大声で悲鳴を上げて、はじめの思考を見事に "鬼火" から外してしまったのだ。


3: "明石道夫の殺害時刻" の真実

明石が、脱衣場の盗撮ビデオの鑑賞会を開いたが、その鑑賞会にはじめを誘う時のセリフが、

「まっ今夜9時に機材置いてある部屋で上映や 気向いたら来いや!!」

というものであった。
そして夜、機材置き室に明石が入ってくる時のセリフが、

「どーも! えろう遅うなりましてん・・・」 で、それに対してはじめは、
「明石さん! 遅いっすよ!! 30分も待ってるんすから」 と、文句を言っている。

以上の状況から見て、このビデオ鑑賞会が始まったのは 9:30 頃と見て間違いないだろう。(この2人の時計が、全く同じだけ狂っているとは考えられないため)

そのビデオの内容そのものは、極めて (読者を少々裏切るホドに (^^;) 短いものだったが、それでも、その後の比留田・大門とのやりとりなどを考えると、最低でも10分位はかかったと思われる。
つまり、明石は、この夜の 9:40 までは、間違いなく生きていたことになるのだ。

一方、翌日、雪だるまの中から明石の死体が発見されたとき、明智が死亡推定時刻を割り出しているが、それによると、

「明石は死後12時間以上はたっていると見ていいでしょう」

とのことで、その時の明智の腕時計は 10:12 を指している。
つまり、明智の検屍と腕時計を信用するならば、明石は、9:40 から 10:10 までの、30分の間に殺されたことになるのだ。

ところが・・・!


4: "氷橋の、作成開始時間" の真実

加納殺害のあった朝、はじめは 3:00 に、響 史郎に起こされている。
それに続いて、加納と明石以外の全スタッフが玄関に集合しているワケなのだから、前夜、犯人としては、できれば 2:30 頃までには "氷橋" を作り終えて別館に戻ってきている必要がある。少なくとも響 史郎はその時間帯には既に起き出していたハズで、ノコノコと氷橋作りから帰ってきたトコロで鉢合わせてしまうと何もかもパーである。

一方、9:40 から 10:10 の間に殺害された明石は、手に "かいば" を握っていた。
つまり、仮に明石が10時ジャストに殺されたとすれば、10時の時点(それが、氷橋の、作成前・作成中・作成後に関わらず)で、犯人は氷橋の地点で、何らかの作業状態を呈した状態でいたことになる。

ところで、犯人は明石を殺害した後、その死体を本館前まで運び、さらに雪だるまの中に隠すという作業を行っているワケだが、これが突発的なものにしろ計画的なものにしろ、これはこれで、犯人にとってはかなりの時間を要する作業であったハズである。少なくとも往復するだけで40分かかるのだ。
つまり、もし10時の時点で、これから氷橋を作り始めるところであったなら、とても 2:30 頃までに別館に戻ってはこれないのだ。

以上のことから、犯人は、8時頃、遅くとも9時頃には氷橋の作成に取りかかっていたと考えるべきであろう。



5: "ドッキリの、最終打ち合わせ" の真実

本来、事件が起こらなかった場合、この "加納を驚かすドッキリ" が、今回の収録の最後の仕事となるはずであった。
そして、"加納のベッドや窓ガラスを揺さぶる" など、この最後のドッキリこそが、今回の収録の中でも最も大がかりであり、つまりは "目玉" だったと考えられる。
さらに、もともと、はじめは、みゆきの代わりとして急に参加したアルバイトであり、響に3時に起こされるまで、この "最後のドッキリ" のことは "知らなかった" ようだ。
その上、明石に関しては "仕事はいいかげん" と言われており、本来、リモコンの操作は、この明石がする予定になっていたのだ。

つまり、このような場合、加納以外のスタッフを集めて、"目玉の収録" に関する最終打合せなどを行う必要はなかったのだろうか?
特に速見などの場合、これも3時に玄関に集合するまで、ドッキリだということを知らなかったようなのだ。
はじめが "本当に殺されたもの" と信じていた速見が、夜中に急に恐くなり、昼間の仲直りがてら加納の部屋を訪れ、そのままその部屋で寝てしまう、なんてことになったら、スタッフとしても、犯人にとっても都合が悪かったハズである。
犯人の仕事は "タイムキーパー" であり、もし打ち合わせが行われていたとしたら、その場にいないことは確実に分かってしまうのだ。

そんな状況の中、8~9時という早い時間から氷橋の作成に取りかかっているワケだから、打ち合わせが行われなかったということは、犯人にとっては "偶然の幸運" としか言いようがないのだ。
それでも、犯人は、はじめの推理した通りの方法で、犯行を行ったというのだろうか?

―― それとも、さらに我々の知らない "真実" が隠されているのだろうか・・・。


6: "背氷村の電力" の真実

水力発電というのは、基本的には、水圧を利用して水力タービンを回転させることによって電力を発生させるシステムを言う。

この村では、夜12時から朝6時までの間、"送電が停止される" とのことであるが、では、具体的に、どういう方法で "送電を停止" させているのだろうか?

これには、2つの方法が考えられる。

1つ目は、「ダムの水門を閉めて、発電そのものを停止させてしまう」 ことである。

"ダム" などというのは、物語の中には一言も出て来ないのだが、もろもろの情報を検討した結果、必ずダムが存在したハズだと考えられるのだ。

まず、その根拠を述べよう。

物語の中に、「去年の夏の大水で、2つの館をつなぐ吊り橋が流されてしまい・・」 という記述がある。
"2つの館" をつないでいたわけなのだから、その吊り橋は谷の最上部近くに架けられていたと考えられるが、それを流してしまうというのだから、この時の大水は、驚くべき 増水であったと推測できよう。

ところで、長い年月で見た場合、谷を溢れる程の増水は "去年の夏" だけだったかも知れないが、谷の半分、あるいは3分の1程度の増水は、過去に何度かあったと考えるべきだろう。
従って、谷底の川の流れを利用した水車程度の発電システムでは、それら増水の度に水没してしまい、メンテナンスが重なって実用的ではない。

従って、川の上流か下流、それも比較的近い位置に、ダムが存在したハズだと推測できるのである。

さて、この 「水門を閉めて発電そのものを停止する」 場合だが、この村では、冬季には "クルマのウォッシャー液が瞬時に凍り付く" ほどの低い気温になる。閉めた水門のふちから、わずかでも水が漏れていた場合、朝になる頃には厚い氷で水門が張り付いてしまい、そうそう簡単には水門の開け閉めなどできなくなるだろう。

しかも、水門が閉まっているということは、村全体の電力がストップしているというワケだから、水門の開閉には "人力" でハンドルを回す以外に方法はなくなる。
それを、"村に残っているのは老人ばかり・・" の力で行うのは不可能と見るべきである。

つまり、送電を停止するのは、残るもう1つの方法ということになるのだが、これは、

「水門を閉めず、水力タービンも回ったままで、従って常に発電は行われているのであるが、どこかにブレーカーを設け、そのブレーカーを切ることによって送電を停止する」

という、信じられない方法である。
わざわざ発電しておきながら、ナゼ送電を切る必要があるのか?
恐らく、我々よそ者にはとうてい思い及ばぬ、また、決して口出しなどすべきではない "決めごと" が、この村にはあるのだろう。

しかし、この村の "送電停止システム" と "ブレーカーの位置" を、犯人が知っていたとしたらどうなるだろう?


7: "加納殺し" の真実

物語の中で、速見と加納が "冷たい女の戦い" を繰り広げるシーンがある。
また、比留田が速水に、
「まあまあそう怒んないでよ! 玲香ちゃんも加納りえのことキライだろ?」
と、話しかけてもいる。
つまり、もはや周知の事実となるほどに、速水と加納は仲が悪かったのだ。

明智が推理したとおり、ゴンドラとビデオテープを使ったトリックで、実は、やはり速水が "加納殺し" の実行犯だったと考えると、実に様々なことにつじつまがあうのだ。

まず、共犯者は綾辻である。
綾辻が、ドッキリのプレートを持って別館に向かう途中でブレーカーを入れる。
これで、まずゴンドラが使えるようになる。

a:
その頃、本館の機材室では、最初の内ははじめがリモコンのスイッチを押している。
ところが、加納が廊下に出た辺りからは、画面の上では "雪夜叉登場のビデオ" になるワケだから、はじめがリモコンのスイッチを押すタイミングと、画面の中での仕掛けの動作とが一致しなくなる。
だから、速水が大慌てで、「ねっ! あたしにもやらせて!!」 と、はじめを突き飛ばしてリモコンを奪ったのである。

b:
前夜の10時頃に明石を殺したのは綾辻である。
明石は "撮影係" であったため、もし明石が生きていれば、"加納のドッキリ" の際、ビデオ操作をするのは明石の仕事となり、雪夜叉のビデオを流すことができなくなる。
従って、明石は前夜の内に殺しておく必要があったのだ。

なお、恐らく綾辻は「特別な用事があるから・・(ポッ)」 などと言って、明石を近くの馬小屋に10時に呼び出し、そして殺したのだ。 明石が手にかいばを握っていたのは、殺害現場が馬小屋だったからである。

c:
ところが、そのまま明石の死体が発見されてしまえば、当然ドッキリどころではなくなってしまう。
だからこれも、一旦、明石の死体を雪だるまの中に隠しておく必要があったのだ。

d:
明智がゴンドラに速水を乗せようとしたとき、速水が頑なに拒否したのも当然である。

e:
綾辻は 『ドッキリの最終打ち合わせの件』 や 『 2:30 までに別館に戻らなければならない』 という危険なリスクを犯して氷橋を作る必要もなくなる。

f:
加納のドッキリの際、綾辻は当然、約20分で別館に到着できる。

g:
はじめが氷橋を作って見せたのは、穏やかな日和の時であったが、"加納の殺された朝" は猛烈な吹雪だったのだ。
そんな中、あれほどの大量の "かいば" を "ガソリンをかけて"、燃えカス、灰、ガソリンのスス、を、周りに飛び散らさないように燃やすのは不可能である。
しかし、物語の中では、それらの痕跡が発見されたような記述や描写など全くなかったが、それも当然である。

つまり、氷橋など最初からなかったのだ。


8: "鬼火" の真実

では、それなら "鬼火" の正体は何なのか?

"村のおじいさんの事情聴取" には、極めて興味深い発言がある。
そもそも、この事情聴取の後で明石の死体が発見されているワケだから、この事情聴取は 10:10 以前に行われていたことになる。
つまり、このおじいさんは、この日の早朝に目撃した内容を午前10時頃に話していることになるのだが、その話の中で、

あの日、ちょうど事件のあった時間ごろじゃと思うが」

と、"鬼火" の話をしているのである。

これはどういうことだろうか?
この老人の記憶力が低下していて、わずか数時間前に目撃した内容を、別の日のことと勘違いして話している、と考えられるが、そうなると、その逆も考えられることになる。
つまり、数日前に目撃した内容を、この日の事件にかぶせて勘違いしているという場合である。

仮に後者であったとした場合、このおじいさんの目撃した内容と、ビデオに収められているモノとは、別の日の出来事ということになる。

異なる日に、谷の最も狭い部分で発光する何かが目撃される。
何が考えられるだろうか?
これは恐らく、一種のカミナリ(放電現象)ではないだろうか。
もともとカミナリとは、上昇気流によって舞い上げられた水蒸気が、上空で、水滴氷粒となり、氷粒となりながらも上昇気流に押されて落下することができず、高密度な中で互いに触れ合う内に帯電したものがスパークする現象である。

これと似たような現象が、あの、狭く風巻く谷間で、何時間、何十時間分の一瞬の割合で発生し、あの最狭部を通り抜ける、密度の上がる瞬間にスパークする、―― それが "鬼火" の正体なのである。


9: 再び "雪夜叉が壊したカメラ" の真実

では、雪夜叉がカメラを壊す必要のあった、その本当の理由とは何なのか?
それは、

「後になって犯人には、もともと2本あったビデオテープを、1本に編集する必要が生じるため」

である。
その2本とは、

I: 当日、加納が部屋から出て、第3のカメラから第2のカメラに切り替わる瞬間までの、リモコン操作を行っていた部屋で録画されていたハズのテープ "A"

と、

II: 前もって撮影しておいた、"雪夜叉による殺害シーン" のテープ "B"

である。

物語中の場面で言うと、加納が画面右下に座り込んで 「も・・もうやめて~~っ」 とベソをかいているあたりから、モニター上ではテープ "B" が再生されていることになる。
一方、他のデッキにセットされているテープ "A" には、実際に第1のカメラで捉えている映像が録画され続けている。
(恐らくは、部屋から出てきた加納が、せっせと雪夜叉の衣装に着替えている場面)

つまり、「も・・もうやめて~~っ」 以降の分を、テープ "A" の、第1のカメラに切り替わった瞬間から上書きダビングしなければならないワケなのだが、第1のカメラを壊すことによって、

1: 第1のカメラに切り替わった時点から、第1のカメラを壊す時点までの間だけ に、ダビング時間・範囲を限定できるから、

であり、

2: 結果的に、そうなってもならなくても良かったのだが、第1のカメラを壊すこと によって、"加納の扮した雪夜叉の去って行くシーン" を、スタッフに見せることできるから。

である。


10: 真実

この事件では、

・綾辻は「加納、比留田、明石、ニセ氷室」に殺意を持っており、
・速水は「加納」に対して殺意を抱いていたのだ。

2人は以前に、何かのきっかけで、互いに殺したいほど憎んでいる相手がいることを知ったのだろう。
やがて、今回のドッキリの企画が持ち上がり、担当スタッフ、出演者が決定されて行くにつれ、2人には "これこそ、絶好のチャンス" と思えたに違いない。
綾辻の "タイムキーパー" としての感覚をフルに活用し、綿密に計画を練り上げた2人は、

「基本的には、綾辻の復讐の要素が強くなることは仕方がない」

とした上で、

「2人の共通の殺害対象である加納を、2人が共謀しないことには決して成立しない殺害方法」

を取り入れることによって、双方ともアリバイを確保し、

「 "一連の事件" という捉え方のワクの中では、決して双方とも、単独犯とは断定され得ない」

という方法を考え出したのだ。
できることなら、「比留田、明石、ニセ氷室」の内の誰かを、綾辻に完璧なアリバイの成立するように、速水が殺害すれば理想的であったに違いない。

しかし、「それぞれの事情を、徹底的に公平に」 することを基本とした場合、この論理以外に方法はない。

綾辻としては、4人への復讐を完遂できさえすれば、その時点で自分の人生を終結させても悔いはない、という覚悟で、最初はあったと考えられる。
ところが、速水が参加することによって生じる、"自分自身も逃れ得る可能性" に賭けて見る気になり、万一、最悪の事態になった場合でも、速水を巻き添えにする気は毛頭なかったのではないだろうか?

だから、はじめに対しても 「あれが、彼女の本当の顔だとは思えない・・」 といったフォローを行っていたのだ。

はじめが、あの "謎解き" を始めたときも、全く的外れな推理に対して、"徹底的に反論すべきかどうか" を、必死になって考えていたに違いない。(例えば、風で飛ばされたハズのガソリンのススの点など)

ところが、はじめの推理を聞き、的外れながら、実際に氷橋まで作って見せる "行動力" を目の当たりにしたとき、ふと、「この場で氷橋を否定して見せたら、今度は速水との共犯のトリックを見破られてしまうのではないか?」 と、感じたのではないだろうか。
実際、はじめが "謎解き" をしているシーンを見ても、綾辻の口から語られるのは "動機" についてのみであり、それ以外の氷橋のトリックやその他については一方的にはじめが語るばかりで、綾辻は否定も肯定もせず、じっと何かを考えているだけなのである。

そして、速水を巻き添えにしたくなかった綾辻は、自分で幕を引いたのだ・・・・

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by mystery_DsD | 2012-04-23 10:47 | @過去検